鼻中隔湾曲症とは
鼻の穴を2つに隔てている中央の仕切りを医学的には鼻中隔(びちゅうかく)と言います。鼻中隔湾曲症とは、この鼻中隔が湾曲(わんきょく)して鼻の通気が悪くなり、鼻詰まりや鼻出血などの症状が現れる病気です。
そもそも鼻中隔は成人ではまっすぐな人の方が珍しく、ほとんどの人に左右どちらかへの湾曲が認められます。その湾曲による症状が何も現れていない場合には、治療の必要がありません。逆に湾曲によって現れた症状に悩まされている場合には、鼻中隔湾曲症という診断となり、治療が必要です。
鼻中隔湾曲症は弯曲している鼻中隔を物理的にまっすぐにしないと治らない病気なので、外科的な手術療法が治療の中心になります。
鼻中隔湾曲症の原因
鼻中隔は前部の鼻中隔軟骨、上部の篩骨(しこつ)垂直板、下部の鋤骨(じょこつ)という軟骨と通常の骨から構成されています。
子どもが成長していく過程で、この軟骨と通常の骨の発育スピードに差が生じ、そのせいで軟骨が通常の骨との位置関係を保とうとして徐々に曲がっていくことが、鼻中隔が湾曲する主な原因となります。
その他に、鼻に受けた外傷が原因となって鼻中隔湾曲症になるようなケースもあります。
鼻中隔湾曲症の症状
鼻中隔湾曲症で現れやすい症状を、それぞれの特徴とともにご紹介します。
鼻詰まり
鼻中隔湾曲症において最も典型的な症状で、鼻中隔の湾曲が膨らんでいる側の鼻の穴が空気の通りを悪くして、鼻詰まりを起こします。様々なリスクを持つとされている口呼吸やいびきが生じたり、呼吸が浅くなることによる脳の酸素不足から頻繁な頭痛を覚えるなども起こります。
鼻出血
鼻出血は、湾曲の有無にかかわらず鼻中隔を覆う粘膜から生じる場合がほとんどを占めています。加えて鼻中隔に強い湾曲があると、粘膜が引き伸ばされて血管が破れやすくなり、出血も生じやすくなります。
【鼻出血が起きたら】
鼻中隔湾曲症で鼻出血が起きた際には、慌てず以下のように対処して出血を落ち着かせてください。
- 鼻の穴から1cmほど上に位置する小鼻のあたりを、親指と人差し指で両側から強く挟み込むようにつまみます。
- 鼻をつまんだまま椅子に座って前かがみの姿勢をとり、顔を下に向けた状態で10分程度を過ごします。
- 行き場を失った血液が喉に流れてきた場合には、吐き出すなどして飲み込まないように気をつけます。
- 10分後に指を離してみて出血がとどまっていなかった場合には、原因が鼻中隔湾曲症以外にある可能性も考えられるので、鼻にティッシュや脱脂綿を詰めた上で、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診しましょう。
嗅覚障害
人は鼻の奥に位置する嗅上皮の細胞がにおいの成分を感知することで、においを感じ取っています。鼻詰まりによって空気の通りが悪くなると、においの成分が嗅上皮まで届かなくなって、においを感じられなくなることがあります。これを嗅覚障害と言います。
また、においが感じられなくなると味も感じにくくなる傾向があり、同時に味覚障害も発生することが多くなっています。
鼻中隔湾曲症の治療方法
鼻中隔彎曲症の原因は、鼻の穴を左右に隔てている鼻中隔の彎曲という物理的なものです。アレルギー反応や細菌感染などではないため、薬物療法では治すことができず、治療には手術が必要です。
基本的に鼻中隔彎曲症矯正手術を行いますが、アレルギー性鼻炎など鼻の炎症を併発している際には粘膜下下鼻甲介骨切除術も同時に行う場合があります。こうした手術は全身麻酔の1週間程度の入院となります。手術は東松山医師会病院にて行います。
鼻中隔湾曲症に関するQ&A
鼻中隔彎曲症はどんな病気ですか?
鼻の穴は鼻中隔によって左右に隔てられていますが、これが強く彎曲していることで起こります。症状には、慢性的な鼻詰まり、口呼吸、いびき、頭痛、嗅覚障害、鼻出血などがあります。そして、鼻詰まりなど類似症状を起こすアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎を併発した場合には、重症化する傾向があります。
どんな症状があったら治療が必要ですか?
鼻中隔の彎曲により、鼻詰まりや口呼吸、いびき、頭痛、嗅覚障害、鼻出血といった症状が慢性的に現れている場合は治療が必要です。
鼻中隔はどうして曲がってしまうのですか?
鼻中隔は軟骨や骨で構成されていますが、軟骨の成長スピードが速いことから成長期に他の骨との位置を合わせるために彎曲しやすいのです。
鼻中隔彎曲症を薬で治すことはできますか?
骨と軟骨の彎曲という物理的な原因で起こっているため薬で治すことができず、手術が必要です。
早い手術を希望していますが17~18歳になってからと言われています。
成長過程で手術を行うと成長に支障を及ぼす可能性があることから、鼻中隔の成長が終わる年齢になってからの手術が適しています。思春期を過ぎれば、いつでも手術を受けられます。
手術で鼻が弱くなるのではと心配です。
症状を改善させるために必要な切除はとても小さいので、鼻が弱くなるといった悪影響は起こりません。ご安心ください。
鼻中隔彎曲症の手術で、いびきも治りますか?
鼻の通りを改善する手術ですから、鼻中隔彎曲症の症状として現れているいびきであれば、手術でほとんどが症状を軽減できます。顎の形状など他の問題が原因で起きている場合には、軽減しない可能性もあります。